殺人事件の容疑者を接客した話①
近い界隈で働いていた人が殺人事件の容疑者で捕まったニュースを見て思い出したのですが、割と話題になった事件の容疑者を知らずの内に接客していた話をします。
当時私はSMよりのヘルスで働いていた。
もちろん接客した時は容疑者だって事は知るわけもなく、それを知ったのは警察からの電話だった。
「○月○日に接客した○○という男を覚えていますか?」
よほど何か無い限り接客のメモを残さないので、それだけ言われてもなかなか思い出せない。実はこういった電話は初めてではない。打率がいいのだろうか。
「実はこの男、今捜査中の○○という事件の容疑者で、詳しく話を聞かせてほしい」
もう逮捕はしているし危険は無いとの事だったので野次馬根性で警察と話す機会を持ってみることにした。
その事件の名前は伏せるが、新宿界隈で働いていた男が女性を殺して、すぐ地元に引っ越していった所を逮捕、というような流れだったと思う。ストーカー殺人か?なんて騒がれて、エアコンのリモコンが持ち出されていた、とか謎の情報もあった気がする。
そんな事件の概要だけはニュースで聞いていたから、その容疑者を何ヶ月か前に接客していたかもしれないというのは正直驚いた。
後日改めて事務所に警察が訪ねて来た。○○事件捜査本部、なんて仰々しい名刺を貰った記憶がある。
警察から電話がかかって来た時は全く思い出せなかったが、警察と一緒に入ったホテル名などをお店のデータと照らし合わせていくうちに段々記憶が蘇って来た。
印象的なお客さんというのは何種類かある。
ひとつはルックス。当たり前だが極端な特徴がある人は覚えやすい。
もうひとつは性癖。これもわかりやすい。
そして私の中で印象に残るもうひとつのタイプがある。
それは、「うまい人」だ。
何百人も接客する中で忘れられないお客さんというのはそれなりにいて、
そのなかでもたまに信じられないくらい濃厚な時間を過ごせるお客さんがいる。
時間があっという間に過ぎて、お世辞ではなく「仕事を忘れるくらい上手」なお客さん。もちろん相性もあると思う。
彼はそのひとりだった。
【つづく。】